カテゴリ:療育の特色・発達療育でできること・できないこと

療育にはできることと、できないことがあります。
そう言われて、みなさんはどのような感想を持たれるでしょうか。
意外だな、と思われたでしょうか。
もしかしたら、療育をすれば、なんでも解決できると思っていた方もいらっしゃるかもしれません。

療育にはたくさんの実現できることがあると同時に、また、限界があります。
療育の「できること」については、アピールされる機会が多く目に触れやすい内容ですが、これまで「できないこと」が語られることはほとんどなかったでしょう。
しかし、とても大切なことなのでお伝えしたいと思います。

まずはできることと、目的をお話しします。
できること=目的と考えていただいても差し支えありません。
療育の目的は、発達障害の子どものスキルを増やすことです。

スキルは大きく、学習スキル、ソーシャルスキル、生活スキルの3つに分かれます。

学習スキルは、読み、書き、計算だけではなく、話す力と聞く力、判断力や記憶力(なかでも、発達障害児にとって特に重要となるのが、ワーキング・メモリと呼ばれる記憶です)、推測する力、空間を認知する力、論理的に物事を考える力など、人間の思考に関わるあらゆる領域が含まれます。そして発達障害の子どもがそうでない子どもを比較して、デコボコの開きが特に目立って現れる部分です。

ソーシャルスキルは、周りの人と正しい対人関係を築く力のことです。
発達障害の子どもは、振る舞い方や物事の感じ方が独特で、この力を十分に発揮することができないことが多いです。
そのため、モデリング(お手本行動をみせる)と模倣、ロール・プレイング(役割演技)などを組み合わせて、人との関係作りを学びます。

学習スキルもソーシャルスキルも、課題を細かい段階に分けることで(スモールステップ)無理なく、また確実に達成できるように工夫されたプログラムを用います。

生活スキルとは、食事、洗面、入浴、排せつ、衣服の着替え、外出などの生活習慣を正しく行う能力のことです。知能の障害(知的能力障害)がない場合や、あっても程度が軽い場合は、自然と身につけることができる領域で、日常生活に支障を来たすことは少ないです。

最後に、療育にできないことについてお話しします。
できないことは発達障害と知的障害の症状を完全になくすことです。

発達障害は心の病気ではないので、たとえ薬を飲んで改善することはできても完治させることはできません。それは療育においても同じです。子どもの個性の一部として、切っても切り離せないものだからです。

療育とは症状や特徴を完全に取り去ることではなく、改善させることを目的としています。
その子どもが持っている苦手な部分を少なくして、得意なことを伸ばして増やすことが可能です。

たとえば、自閉スペクトラム症であれば、感情のコントロールを円滑にしたり、コミュニケーションの力を日常生活に支障のない程度に引き上げることを目標にします。

AD・HDであれば目の前の課題に集中することや、複数の物事を整理して考える力を身につけることを目指します。

療育は限界がありつつも、療育においてしか実現できないことがたくさんあることも事実です。療育体験を通じて享受できる能力の数々は、将来に渡ってかけがいのない財産となります。

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